2016年の貸家着工は41万8543戸と8年ぶりの高水準になったようです。
相続税の節税対策でアパートなどの貸家を建てる動きが活発化しているためですが、一方で既存のアパートやマンションの空室率は上昇しています。
専門家は「実需を伴わないアパート・マンション建設は続かない」として、バブル崩壊と首都圏郊外のさらなる「空きアパート」増加に懸念を示しています。
2016年の新設住宅着工戸数は前年比6.4%増の96万7237戸で、2年連続で増加しています。2013年以来3年ぶりの高水準で、日銀のマイナス金利政策などを受けた低金利の長期化も住宅建設を後押しした形です。中でも大きいのが貸家着工の増加です。新設住宅着工のうち、持ち家や分譲住宅は20万~30万戸台にとどまります。
これに対して貸家着工件数は08年のリーマン・ショック後は30万戸前後で推移したものの、13年に35万戸を回復し、16年には40万戸を突破。この結果、新設着工の4割超を占めています。貸家着工数増加の背景にあるのが、冒頭に記述いたしました相続税対策の対象となった15年の相続税の課税強化です。
貸家を建てると土地の評価額が下がって相続税が減らせるため、節税目的のアパート建設が相次いだ為です。
その結果、新築アパートが急増したことで、古いアパートの空室率が首都圏近郊を中心に急増するなど、ひずみが生じている訳です。不動産調査会社のタス(東京都中央区)によると、首都圏のアパートの空室率は15年夏ころから急上昇しており、神奈川県や千葉県では木造などの空室率が35%を超えているとの事。
同社の藤井和之主任研究員は
「少ないパイをアパート大家が奪い合っている状態。首都圏近郊で埋まっている物件は、駅近や新築などの条件の良いものが多い。人口減が続く中、条件の悪い物件は徐々に不良債権化していくのではないか」
と分析しています。また、首都圏近郊などでは、今後、高齢化が急速に進展することが予想されます。
ニッセイ基礎研究所の岡圭佑氏は、相続税の課税強化や低金利の長期化で「すぐにバブルが崩壊することはない」としながらも「首都圏郊外の高齢化の進展がバブル崩壊のきっかけになる」と懸念を示しているとの事です。
今更ながら、今後は「高齢化」と「少子化」が賃貸事業経営のキーワードとなっていく事を強く感じるこの頃ですね。