前回(令和5年12月号)に続き、日本と外国の賃貸借契約の違い、習慣について書かせて頂きます。前回同様にアメリカを例に挙げてみます。
1, 保証金(敷金)の額は賃借人の経済状況やペットの有無で決まる
賃貸契約の際には、預り金として保証金を大家さん側に支払います。カリフォルニア州の法律では、保証金の額が上限2か月までと決められているようです。日本では最近敷金無しが増えてきていますが、それでも1ヶ月が大半を占めるのではないでしょうか。
アメリカの大型賃貸アパートなどでは、賃料の額に関係なく販売促進で500ドル程度(1ドル145円で72500円)の低い金額を設定することもあるようです。この点は自己資金が少なくても借りやすく、賃借人にとって有利な市場だと言えます。
保証金の額は、賃借人の経済面のバックグラウンドで決められます。
例えばアメリカへ移住して間もない人や、クレジットヒストリーが良くない人など経済面で不安要素が高い場合は、保証金の額が高く設定される。日本では事前に決めたもの(賃料の1ヶ月とか2ヶ月とか)を、賃借人の経済面がバックグラウンドを踏まえて変更はしないですね。
またアメリカでは、ペットを飼える賃貸物件も多くあります。壁や床がペットによって損傷することを懸念して、ペット1匹について500~1000ドル程度、保証金を増額するのが一般的のようです。日本も同様でペット飼育は追加1ヶ月とか増額するのが一般的です。
なお保証金は退去時に返却されますが、賃借人の過失で室内外の物に破損汚損があった場合は、預けた保証金から費用を差し引かれるようです(経年劣化による汚れなどは除く。)この点についても、扱いは日本と同じようですね。
2, 原状回復義務
日本とアメリカでは、賃貸契約における「原状回復」の考え方が大きく異なります。これは、DIY文化や不動産への考え方の違い、そしてマーケットの強さが影響しています。
日本では新築物件への信仰が根強く、「他人が住んだり他社が使用した形跡を好まない」傾向があります。そのため、物件を借りる際には新品同様の状態を求めることが多く、物件を貸す際には原状回復義務を厳しく設定する場合が多いです。また、DIY文化が一般的ではなく、物件を自分好みに変えることに抵抗感がある人も多いのが現状です。
一方、アメリカではDIY文化が一般的であり、物件の変化に寛容な傾向があるようです。そのため物件を借りる際には、自分好みに変えられるよう求めることが多く、物件を貸す際には原状回復義務を緩やかに設定することが多いようです。
また、アメリカでは不動産への考え方も異なり、物件は投資対象として見られることが多く、借主のニーズに合わせて改装することは一般的となっているようです。
2回にわたって日本との違いを書かせて頂きましたが、アメリカの賃貸借契約から学ぶことも多くあるように思えました。日本の賃貸借契約も、借地借家法という強烈な借主保護から、もう少し当事者同士の合意を優先するような方向に変化していけばいいなと思うのは私だけでしょうか。