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財産の差し押さえ申し立て

2022年12月6日 火曜日
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前回は、滞納者に対する支払督促という法的手段に関してご説明いたしました。

残念ながら、確定判決(債務名義を得る=債務が確定する)を得ても財産がないなど嘘をつく方がいらっしゃいます。多くの時間とコストをかけて裁判を行い、金銭債権の判決を取得したとしても、債務者の財産の所在が分からず、苦労して取得した判決が何も意味をなさないということがあります。

 

判決文や公正証書、調停調書を持っていても、債務者の財産の所在がわからず、債権の回収ができないという事態が多々あったこと等も踏まえ、2020年4月に民事執行法が改正されました。改正事項は複数ありますが、今回は、債務者の有する財産の情報を開示する手続きの改正についてご説明します。

 

財産開示手続とは、債権者の申立てにより、裁判所が債務者を裁判所に呼び出し、債務者に自己の財産について陳述させる手続きです。

改正前の民事執行法では、債務者が裁判所に出頭しなかったり、虚偽の供述を行ったりした場合は、30万円以下の過料が科されることが規定されてはいました。

上述のように、財産開示手続は、債務者に自己の財産を陳述させることで、債権者は、債務者の有する財産の所在等の情報を知ることができます。そして、債権者は債務者が陳述した財産の情報を基に、その財産に強制執行をすることが期待されていました。

 

しかし、財産開示手続は当初の期待通りにはいかず、債務者が裁判所から呼び出されても出頭しないケースが多くありました。実際に、平成29年度の財産開示手続の申立件数のうち、約40%は債務者が不出頭で手続きが終了しています。財産開示手続は、債権回収の手段として実効性が高いとは言い難い状況でした。

 

今回の改正の過程で、従前の30万円以下の過料では、債務者に対する制裁が弱いという指摘がありました。実際、債務者が強制執行されるよりも、過料を払ったほうが安く済むと考えた場合、債務者は出頭しなかったり、虚偽の陳述をしたりする可能性があります。

このようなことから、改正法では、不出頭や虚偽の陳述をした場合は6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されるようなりました(改正民事執行法第213条第1項)。過料と異なり懲役と罰金は刑事罰です。これにより、債務者が刑罰に科されることを恐れて出頭し、真実を陳述することが期待されています。

このように、改正された財産開示手続は、債務者に対して大きな心理的圧力をかけることで、債権回収のためにより実効性のあるものに改正されたといえます。

 

従来は、財産開示手続の対象は、判決や調停調書等に限られていました。

改正法は、上記に加え、仮執行の宣言を付した支払督促、仮執行の宣言を付した損害賠償命令、金銭等の支払いを目的とする内容の公正証書等も財産開示手続の対象になりました。

 

この改正により、例えば、従来は公正証書で養育費を定めていた場合は、財産開示手続の申立てをすることができませんでしたが、改正法により、財産開示手続を利用できるようになりました。財産開示手続の要件は、改正が行われず、下記のいずれかに該当する場合に、財産開示手続を申し立てることができます。

債権者が強制執行や担保権の実行による配当等の手続きで、

一部の弁済しか得られなかったとき

債権者が把握している債務者の財産に対する強制執行をしても、

一部の弁済しか得られないことの疎明があったとき

 

今回の財産開示手続の改正により、債権者は債務者の財産の所在を把握できる可能性が高くなり、債務者に対して強制執行をかけ、債権回収の可能性があがるものと期待されています。よって今後は、財産開示手続の申立てが従来よりも増えると思われます。

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